楽曲の販売促進に関して その2 : Sync Licensing、Creative Commons、YouTubeのContent IDによる楽曲の販売促進効果に関して

同期ライセンスからさらに売り上げを上げる5つの方法という記事によると、Sync Licensingがやけに盛り上がりを見せているように感じられる。そして、あるインディアーティストがYouTubeからの収入で家賃を払っている方法という記事によると、Shannon HurleySync Licensingを利用し、多くの収入を得たとあるが、Shannon Hurleyの楽曲をFriendlyMusicで検索しても見つけることはできない。つまり彼女はその後、Sync LicensingからOpt-outしたことが明らかである。そしてYouTubeの「ミュージックライブラリの広告をサポートする音楽」で彼女の曲が検索可能なことから、現在彼女がYouTubeのContent IDを利用していることがわかる。なぜ彼女はSync Licensingで収益を上げていたにも関わらず、Sync LicensingからOpt-outしたのか?単純に考えた場合、Sync Licensingで収益を上げ、知名度も上がったため、Sync Licensingは不要になり、Content IDによる楽曲の管理に切り換えた、ということかも知れない。


FriendlyMusicのアクセスは少なく、20130128の調査以後、その認知は広まっていない。また、FriendlyMusicでダウンロードした楽曲を使用した動画がYouTubeで再生された場合、「第三者が著作権を保有するコンテンツが含まれています」という内容の忠告が表示されることを考えると、今後も同サイトの利用者が増えるとは思えない。Sync Licensingの唯一の利点は映画やCMなど商用利用の場合にユーザ、著作権者双方に面倒な手続きが発生しない、ということだ。しかし、商用利用はレアなケースである。


YouTubeは1000億円以上をコンテンツIDの権利保有者に払っているという記事も興味深いが、Sync Licensingを使用せずに、YouTubeでContent ID申請すれば、Sync Licensing同様YouTubeでの広告収入に結びつけることは可能だ。しかし、ユーザからすれば、収益化に結びつかないContent IDで管理された作品より、フリーで使用できる音楽を選択するというのが自然な行動ではないだろうか?さらに、Content IDはあくまでYouTube動画に限られ、TVや映画などYouTube以外のメディアでの楽曲の利用に関しては、All rights reservedまたはCreative Commonsの範囲となる。
もっとも、Sync Licensingを使用した場合、Content IDを申請した場合、Creative Commonsを使用しContent IDで管理した場合のいずれも、YouTubeで楽曲が埋め込まれた動画が表示される際は「第三者が著作権を保有するコンテンツが含まれています」の忠告が表示されることにはなる。ただし、ユーザからすれば、Sync Licensingを使用した場合は予期せず前述の表示と遭遇することになるのに対して、Creative Commonsを使用しContent IDで管理した場合は、商用利用なのだから、ということになる。これは大きな違いだろう。しかし、問題は、商用利用でない (収益を得る設定がされていない) 動画が表示される際にも同様の忠告が現れるということだ。対処法としてはCreative Commonsライセンスを表示するページで、その旨をユーザに伝えるということだろうか?


クリエイティヴ・コモンズに関する悲観的な見解を読んだからということではないが、楽曲にCreative Commonsライセンスを付与したからと言って、すぐに劇的な販売促進効果、宣伝効果があるとは考えられない。Jonathan Coultonもその成功の理由として、結局のところ、「わからない」と言っている。音楽におけるCreative Commonsの一般的な利用のされ方が、動画のBGMということであれば、利用者が少ないとは言え、FriendlyMusicという入り口があるSync Licensingの方が目先の収益を上げるための仕組みとしては有効に思える。


また、サイト上で、楽曲購入後はCreative Commons by NC同様の条件下で使用可能との表示をすることも考えられるが、この場合、Creative Commonsを表示することと大差はなく、Creative Commonsを使用した方が、ユーザ側から見ても安心感があると考えられる。

結論 Sync LicensingCreative Commonsには一長一短があり、収益を上げるための決定打は得られない。そして、それらの効果も不明 (20150227)。楽曲の宣伝・拡散効果を狙うならCreative Commons、目先のYouTubeの広告収入を狙うならSync Licensingということになる。そこで、楽曲の宣伝・拡散効果を得るためにCreative Commonsを使用し、YouTubeの広告収入を得るためにContent IDを利用するというのがベストな選択肢かも知れない (20150228)。そこで、まずはContent IDを申請し、現状の収益を確認した上で、Creative Commonsを利用するという方向はどうだろうか? (20150309)

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